狙撃手 ハル

年長ネコ、メスネコのハルちゃん。


オスネコのレオと兄妹で、もうじき６歳になる。

ハルは、おとなしい子だったのですが、今ではいちばん
意地悪になったかもしれません。


意地悪ばあさん、じゃないけど。


２世代目のクーちゃんを追い掛け回すのがこの、ハルなんです。


追い掛け回す、と言っても、
遊びのひとつ、なのだと思っているのですが、


遊びにしてはけっこうな激しさです。


追われるクーちゃんは、
突然、外から家の中へ飛び込んできます。


避難してくるわけです。


ときに、クーちゃんのカラダを観察すると、体毛が剥がれている
こともあるのです。（そんなひどい剥がれではないですが・・・）


遊びの本質には、やはり狩猟遊び、というのが見えてきます。


ハルは、これまで、
スズメを３度捕獲して帰ってきたことがあります・・・


まさに狙撃手、なのです。


とある日の朝、
わたしが歯磨きをしながら外の空気を家の中に取り込もうとしていたとき、


道路を超えた向こう側の河原の土手の奥から、
得体のしれない（？）物体が見えました。


なんと、それはハルでした。

土手のくさむらの中からその姿を現したハルは、誇大表現すれば、
不気味・・・

でした。


ハルはわたしの方へ、いや、家の方へ向かって歩いてきました。


・・・・でもなにか顔つきが変です。


顔つきが変・・・なのはなぜか？


その口に、スズメが咥えられていたからです。
（あの・・・ネコが獲物を咥えている状況は・・・・怖いものがあります・・・）


さすがに、びっくりしたわたし。


これ、ドキッ、とします・・・本当に。


ハルは、どうだ、とばかりに威風堂々わたしに向かって歩いてくるわけです。

その状況は、わたしにとっても、どう応対したらいいのか？？？？・・・？？？
なわけです。


それだけ実際にわたしは驚いていたのです。
スズメには可哀想なことをしたと思うのですが、ネコを飼っている以上、


こうしたことは日常茶飯事なのです。（あとからそう思うわけでして・・・）


捕らえたスズメを咥えて、
わたしの目の前まで歩いてきたハル・・・どうしたでしょうか・・・


ほら、オメエに餌を獲ってきたよ・・・あげるから食べて。
といったような感じで、


居間のサッシの前に立つわたしの目の前に、、、、ポトリ・・・と。


ハルは、もしかしたら、
わたしをネコの仲間だと思っているのか？

スズメをいただいて、特に嬉しいわけでもない、わたしでしたが・・・。


とりあえず、
・ハル～すごいなァ～獲ってきてくれたのか、ありがとう・

などと言葉をかけ、いまだランランとするハルの眼光に怯えながら
言葉を選んでいたりするわけです。


・・・・（こんな光景に現代人が遭遇すれば、誰しもが驚きます・・・間違いなく。）


そんなこんなで、
ハルはその後一層、狩猟に磨きをかけていったのです。
（わたしとすれば、そこに特に、磨きをかけてはもらいたくなかったのです・・・）


狙撃手・・・または、スナイパーハル・・・わたしはそう呼んでいました。


ネコの狩猟には、それだけ野性味を見てしまうのです。
非日常的な狩猟ですから。


ハルはネズミよりも、鳥、が好きみたいでした。
何度も小鳥を持ち帰り・・・


わたしを疲弊させてきたのです・・・・ハルはとても元気になっていくのですけど。


わたしは近所の目もあって、
疲れていくわけです。


近所の目というのは、
小鳥を狩猟してくるネコに、とても厳しいものがあります。


か弱い小鳥・・・それを捕らえるネコは悪代官のようなものなのでしょう。


でも、
ネコにとって狩猟は命懸けのものなのです。


もし、飼い主がいなくなれば、自分で餌を取らなければならなくなるわけです。
絶対に狩猟を成功させる必要があります。


・・・食べなければ生きていけないのですから。


こうしたネコの狩猟を目にしていると、
人間というのは、なんとはかない生き物か、とさえ考えさせられるのです。


人間は無駄なものさえも狩猟します。


ネコは必要な遊び方でもあり、必要な食べ物だけを狩猟するのです。


飼われているネコでも、一定期間に狩猟しなければその腕は錆びれて
いきます。


きっとハルは、
狩猟の腕を保つためにこうして狩猟を欠かさないのではないのか？


いつ何かが起こって、わたしたちが居なくなったら・・・。


ハルは自分のチカラだけが頼りになるのです・・・誰も助けてはくれません。


ただ・・・
クーちゃんをあまり追い回して遊ぶのは、よくないかもしれません。


ハルは喜んで遊んでいるらしいけど、
傍目に見ているわたしには、いじめてる、ように映るのです。



・・・・しかし、クーちゃんも・・・
ハルの頭に手を乗せたり、顔にネコパンチのように触ったり、と


意外にどちらもどちらで、、遊びを楽しんでいるのかなぁ・・・。


そういうわけで、狙撃手ハル、は、
春までおあずけとなりそうなのです。


春になるまで、、待っとくれ・・・ハルちゃん。

もう冬なので、狩りはなかなかできなくなるからね。

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