ちびりんの 決意

２年ほどの、ちびりんとの生活でした。


日に日に成長するちびりんは、いつしか逞しいオスネコになって
いました。


アパート暮らしながらも、外へ出て遊びまわっていたちびりんは、
外の世界で野良ネコたちと顔見知りになって、


なおさら勢いがついていたのかもしれません。


ほぼ毎日のように夕方から出かけては朝帰りの日々。
お昼はずっとアパートの部屋で眠っていました。


・・・というか、当時は共稼ぎ夫婦だったわたしたちなので、
午前中はカミさんが部屋にいたのですが、午後からパートで働きに
でていたので、


ちびりんはほぼひとりぼっちで居たというのが本当のところです。

変化が訪れたのは、ネズミを捕獲してくるようになってから。



やはり本能は野生性を取り戻させるのでしょう。
ちびりんは目つきが鋭くなっていました。


ネコの目はとても鋭くなり、その目で見つめられると、つい目を
そらしてしまいたくなるものです。


すでにちびりんの目は時折そんな目をするように変化していたのです。


外でどんなふうに遊んでいたか、全体像はわかりません。
きっと狩猟遊びが主体だったことでしょうが、


この狩猟遊びは、ちびりんの場合、去勢手術もしていなかったので、
元来持って生まれたネコ本来の姿を完全に取り戻す結果になったのは
言うまでもないでしょう。


だから・・・・
家を出ていくあの日、ネズミを捕獲して家に帰ってきたちびりんは、


とうとう、カミさんの目前で、ネズミを食べてしまったのです。



帰宅してカミさんからそのことを聞かされたときは、びっくりしました、が、
でも、ネコだから当たり前、そんな気持ちでした。


しかし、

ちびりんには絶対的な決意が見て取れた現象だったのです。


外でこうやって、
自分は食べ物を与えられなくても生きていけるんだよ。


ちびりんの言葉にできない、そのもどかしさ。


カミさんの目の前で捕獲したネズミを食べてみせた・・・このとこは
ちびりんの外で生きることへの決意表明だったのでしょう。


この日、ちびrんは、
アパートの部屋と外と、十数回出入りを繰り返したそうです。

きっと何度も何度も試しながら、
この家に居ようか、やはり外で暮らそうか・・・彼は悩んだのでしょう。



・・・・そして、この日、
わたしが仕事から帰宅すると・・・・


ちびりんの姿は、消えていました。

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