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無言の 鳴き声



ちびりんは、行ってしまいました。


アパート暮らしのひとりぼっちだった部屋から、友達や
争い合う仲間がいる外の世界へ。


危険はいっぱい潜んでいるその世界で、
ちびりんは生きていくことに決めたのです。


夕方、帰宅したわたしは、ちびりんがいないことに気がつき、
カミさんに問うと、

・今日は十数回も出入りして、まだ帰っていない・とのことでした。


十数回とは、尋常ではない回数です。


でもまぁ、いつものことと、あまり気にせず就寝。


しかし、次の日の朝にも姿を見せませんでした。
普通なら朝方には帰ってきてお昼はずっと部屋の中で眠っているはずの
ちびりん。


この日から、とうとう二度とちびりんの姿を見ることはなかったのです。


探しました。
ちびりんを何日も何日も探してみました。


探しきれませんでした・・・。


あの日、居なくなる朝。
思い出したのはちびりんのそれまでに一度も見せたことのない行動。


仕事の出かける前にコーヒーを啜っているわたしの膝・・・・

ちびりんがポン、と乗っかってきたのでした。
それも、背中をわたしに向けながら、コーヒーを飲み終えるまでずっと


わたしの目の前で背中を見せておちゃんこしていたのです。
わたしを一度も振り返ることもなく、



・ちびりん、さぁ、仕事だから、悪いね・
そう言いながらわたしはちびりんを抱き上げて床に・・・・。



それが最後のちびりんの姿でした。


・・・わたしが仕事へ出たあとからちびりんは、外へ何度も出たそうです。



こうして思い出すと、
ちびりんの、無言の鳴き声がわたしのカラダに突き刺さるようです。


ちびりんの、もう決して鳴かない、と決めた決意。
ちょっとやそっとのことじゃ鳴き声すら危険な外では生きていけません。


ちびりんは、あの可愛らしい子ネコ時代の鳴き声から、
成ネコのオスネコらしい図太い鳴き声に変わっていました。


でも、わたしと最後のお別れをした朝、
ちびりんの鳴き声を聞くことすらできませんでした。


無言のちびりんは、このとき自らの生きる道を決めていたのでしょう。

わたしの膝に乗っかりながら、
わたしを一度も振り返ることなく、



・もうボクは、ひとりで生きていくよ、だから心配しないで・


・・・・ちびりんが、こころの中で、そうつぶやいたように思うのです。
タグ:無言 鳴き声
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